趣味と答えるには躊躇する趣味

去年の年末に突然甥っ子からメールが来た。
1Q84っておもしろいの?」
私は年を取っている分、村上春樹は初期から読んでいる。たぶん、「羊を巡る冒険」が初春樹だったと思う。主人公がいるかホテルにたどり着いたことは、今でもときどき鮮明に思い出す。主人公といっしょに羊の後を追うのがとても面白かった。その後の話になる「ダンス・ダンス・ダンス」もドルフィンホテルの13階に行ってドキドキしたことを今も覚えている。他の短編集も読んだ。でも、最近はあまり熱心に読んでなかった。本は部屋の収納力を考えて極力図書館で済ますことにしているので、1Q84も借りる人がいなくなってから読もうと思ってた。図書館をあまり利用したことがない人に説明すると、話題の新作は予約者数がすごくてしばらく借りることができないのです。
村上春樹の作品は、わりと性描写が多くて、嫌いな人は生理的にこれが嫌なのかと想像する。メールを送ってきた甥っ子は中学2年生だ。性描写が教育上悪いというより、まだよくわからないと思う。下世話な下ネタだったりしたらそれなりに楽しめるのかもしれないけれど、そうではないからだ。
自分が中学生のとき読んでた本はどんなのだったか?と考えても、まったく思い出せない。一番、本を読んでなかった時代だった。小学生までは読書好きだったけど、大人へ移行するのがうまくいかなかったのか、何を読んでも面白くなくて読めなかった記憶がある。たしか、性描写や大人っぽくなくても分かるのはあったような気がする。と思い出したのが、「パン屋再襲撃」だった。私がものすごく好きな話。まだ大人になる前に、恋愛やその先にある結婚、家族を持つということ、そういったとが憧れ混じりに漠然とあった当時の私は大人の生活というのはこういうものだ想像していた。彼らが住んでいる郊外の町がクリアに頭に浮かんだ。しかし、未だにその時の頭のなかにある絵はまだ見たことがない。
甥っ子のお陰で自分の貧しいけれど楽しい読書体験を思い出すことができた。よく、流行歌が自分の思い出を蘇らせてくれるというけれど、私の場合は、それが本のようだ。最近、寝る前に布団の中でDS文学全集を読んでいる。そして、芥川龍之介の「トロッコ」を読み、高校時代にタイムスリップした。国語の授業は、退屈しのぎにいつも教科書の小説を読んでいた。私は読むのがわりと早いので、1学期が終わる頃にはすべて読んでしまっていた。でも、トロッコは好きで何度も読んだ記憶がある。そしてそのたびに主人公の男の子の切ない気持ちを思った。ちなみに、「走れメロス」もそれで再読したが、内容はすっかり忘れていた。読み終わると、いまいち好きじゃないと学生時代とまったく同じ感想を持った。