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ポトスライムの舟

私は、自分より年下の作家をほとんど読んだことがない。話題になっているものには、目を通したりしたことがあるけれど、読みたい気持ちになれなかった。ふと見つけたブログで勧められていたので図書館で借りて読んだ。2008年後期の芥川賞受賞作品*1
話的には、何も起こらない。典型的なワープアの29歳の女の子。四十路の私から見るとまだまだ若いのだけれど、すでに人生に疲れきっている。私も若いときからずっと疲れていたけれど、こんな現実をすべて受け入れ淡々と暮らすことはできなかった。ギラギラした怒りみたいなものと、正反対のお気軽な楽観主義みたいなものを持っていた。将来は、幸せになると漠然と思っていたような気がする。それは、バブル時代だったからだろうか?
淡々と生きているが、やはり目標は欲しい。そうでないと、生きている実感があまりわかないから。そんなときに、世界一周のクルージングのポスターが目に入った。163万円というほぼ主人公の年収だけど、それに行くことに決める。そこから何かが心の中で動き始める。といっても、恐ろしく小さな「何か」で事件に巻き込まれたりするわけではない。途中、当然、順調に貯めて、「はい、出発」とはならない。あらすじになってしまっているが、ネタバレもなにもない。ネタが存在しないといってもいい。淡々と読み進められておもしろかったのだが、読後にふと「彼女163万貯まったかな?」みたいも主人公のことを考えたりするということはなかった。
いっしょに収められている「十二月の窓辺」は、パワハラで徹底的に痛めつけられる新入社員の女の子が主人公だ。これも、若いんだからすぐ辞めて違うところに行けばいいのに、とアラフォーの私は思ってしまう。パワハラをする上司がヒステリックな30代半ばの女なのだけれど、女でこんな人はいるのかな?と思ってしまう。ヒステリックな女は男がヒステリックになるより周りから受け入れられないと思う。だから、会社や社会に対しては感情的に怒っているというのを隠そうとする女が多いんではないのかなあ。男より感情的になっていると批判されやすいから。そこまで頭のいい人じゃないという設定なのかもしれないけれど。とにかく、一方的にやられっぱなしなので、読むのが辛い。カタルシスを得られそうなところで、肩透かしされるし。それと、わかりにくいところも多かった。彼女が彼とか、通り魔とか。なんのためにこの設定にしたのかがわからない。設定とか、そんなんじゃないんだよ。といわれそうだけれど。でも、通り魔が出てきたなら、もっと効果的に使って欲しい。パワハラ女上司ももっとドラマティックに散って欲しい。しかし、これは作者の意図するところじゃないだろうし、そんな物語を書く気もなさそうだが。

*1:芥川賞が後期と前期に分かれているのを始めて知った。2008年の前期の受賞作は中国人作家ということで話題になっていたが、この作品のことは全くしらなかった。今調べてみて、受賞者の一覧表を見ると、知らない人も多い。芥川賞を取ったらすべて話題になるわけじゃないんだ…